会社の売上が減少し,経費節減の努力も追いつかず,負債が増加し,資金繰りが難しく支払の目処が立たない場合,最後の手段は会社の破産です。
簡単にいえば,会社の破産とは,会社の資産を処分し債権者に対して公平に分配した上で,会社を清算する手続です。銀行や国金の借入,買掛金や滞納税金を含め,会社の一切の負債は返済不要となり,破産手続終了後には会社は清算となります。
立ち行かなくなった会社の整理方法として,会社の破産は以下のとおり関係先にとっても悪くはない選択です。
会社が破産をすると会社は消滅しますので,それ以降,社長が会社に対して責任を負うことはなくなります。経営難の中で苦労を重ねてきた社長にとっても,会社破産の手続の諸事が終われば会社経営は一段落となります。
社長は社長職を離れますので,以降は別の会社に雇われて勤務をすることも可能ですし,場合によっては時期をみてまた別会社を設立し,社長業を再開することにも法的な制限はありません。
社長ご自身の判断にて,また次の人生の歩み方を決めていただきたいと思います。
会社の破産により債権者は貸付債権が回収不能となり大きな不利益を被ります。
しかし,会社に財産があるなら,破産手続の中で会社財産が処分されることにより,債権者は自らの債権額に比例した割合で配当を受けることができます。
会社に資産がなく,債権者への配当がなかったとしても,会社の破産により,会社の財務状況が開示され,会社が破産に至った経緯を知ることができますので,債権者としてもある意味での納得性を得ることができます(これを「情報の配当」ということがあります。)。
また,会社が破産することにより,税法上,未回収金について貸倒処理ができることになり,法人税が安くなります。債権者にとっても,回収の見込みのない不良債権を抱え続けるより,かえってありがたいという話をしばしば耳にするところです。
会社が破産する場合,通常は会社が廃業するタイミングで従業員は即日解雇となります。ただ,会社に資産がまだあるのであれば,弁護士の判断にもよりますが,優先して支払われるべき未払い賃金や解雇予告手当・退職金などの支払を受けることができる場合があります。
また,会社に資産がない場合でも,会社が破産することで国の未払賃金立替制度が利用できることとなり,未払い賃金の8割の支給が受けられる場合があります。
さらに,雇用保険に加入していれば,会社都合扱いの失業となり速やかに失業給付が受けられます。
会社の倒産準備には弁護士の関与が絶対に必要です。
弁護士が関与しない会社の倒産は,社長が夜逃げしてしまって後に従業員が残され困るとか,会社に取引先が押しかけ在庫を奪っていき混乱が生じるとか,金融機関が不良債権処理できずに困るとか,周囲に多大な迷惑をかけてしまうことになりがちです。
社長が将来に再起を考えたときにも,過去の清算が済んでいないということでは,やり直しも困難となってしまいます。
会社の破産・倒産の際は必ず弁護士にご相談ください。
会社が営業中であり,従業員がいる場合,会社の廃業により従業員は解雇しなければなりません。
従業員にとって会社の倒産は一大事ですから,解雇の際は様々な混乱が生じるでしょう。混乱を防ぐため,通常,廃業時には社長と弁護士が同席した解雇説明会を開催し,弁護士が未払い賃金,退職金についてや,解雇時の雇用保険や健康保険などの諸手続について従業員の皆様に説明し,従業員の皆様を最後までサポートします。
事案によりますが,会社の関係先に弁護士の受任通知を送付し,社長に連絡をしないよう求めたり,破産手続の進行を待つよう求める場合があります。
債権者や関係先としても会社倒産の際に不合理な処理がなされないだろうことについて一定の安心をするでしょうし,以後の関係者との連絡は弁護士が社長の代理人として担当しますので,社長も安心です。
破産手続にも費用がかかりますが,この費用が心配で弁護士への相談ができない方がいらっしゃいます。
しかし,費用の準備の仕方にはいろいろな方法がありますから,手続費用が用意できないからといって弁護士への相談を躊躇しないで下さい。
例えば,会社が廃業しても,そのことで会社が持つ権利がなくなるわけではありませんから,会社に未回収の売掛金がある場合,廃業後であっても取引先に請求し,これを回収して費用に充てることができます。こうして破産の手続費用が不足していても,売掛金の回収により賄えるケースが多くあります。
弁護士の経験上,手持ちの運転資金が尽きたことを契機に会社の破産をご相談いただくことが多いため,破産の手続費用を即金で用意できるケースはむしろ少ないといえます。手続費用が用意できないからといって弁護士への相談を躊躇しないで下さい。まずは弁護士にご相談ください。
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